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ブログその他潤滑油耐熱グリスとは?成分別におもな種類と特徴、使用可能温度を解説

その他潤滑油 2023.07.04(Tue)

耐熱グリスとは?成分別におもな種類と特徴、使用可能温度を解説

耐熱グリスとは?成分別におもな種類と特徴、使用可能温度を解説

高温・高摩擦の過酷な環境において、機械の動作を補助し、部品の摩耗や劣化を防ぐ役割を担うのが「耐熱グリス」です。

 

しかし、耐熱グリスと一口でいっても、数多くの製品が提供されているため、自社で使用する潤滑剤をどのような基準で選ぶべきか分からない方も多いのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、耐熱グリスのおもな種類と特徴を成分別に解説します。自社工場における使用環境や機械の稼働条件に適した耐熱グリスを選定するために、お役立てください。

 

また、耐熱性能にすぐれたグリスをお探しの方であれば「JAX JAPAN」が提供する「製品」をご検討ください。

 

耐熱グリスとは

 

耐熱グリスとは、文字通り、熱の影響を受けにくい潤滑剤です。

 

そもそもグリスとは「基油(ベースオイル)」に「増ちょう剤」や「添加剤」などを加えた半個体、または個体状の潤滑剤を指します。

 

液状の潤滑油に比べて粘度が高いため、高回転で動作する部品や油膜を形成しづらいベアリングやギア、その他摺動部(しゅうどうぶ)に使用されるのが、一般的な用途です。

 

なお、耐熱グリスは熱に対して、以下のような耐性を発揮します。

 

  • 熱によってグリスが軟化・流出しにくい
  • 基油(ベースオイル)の蒸発、焼付きを防ぐ=スラッジの発生を防げる
  • グリスの固化や酸化による劣化を防げる

 

グリスは熱によって、劣化や形状変化が生じやすく、一般的には130℃付近が半固形状態を保てる限界温度といわれています。

 

熱によってグリスが軟化してしまうと、潤滑不良が発生したり、騒音やスラッジ(基油の焦げつき)の原因になったりするため、高温環境で使用するグリスには耐熱性が必要となります。

 

耐熱グリスの性能に影響を与える2つの成分

 

グリスの耐熱性能は、おもに配合されている「増ちょう剤」と「基油」の成分によって決まります。

 

グリスに添加される増ちょう剤は、おもに以下の2種類が一般的です。

 

  • 金属石けんを増ちょう剤として添加した「石けん系」
  • 有機化合物または無機化合物を使用した「非石けん系」

 

増ちょう剤の成分によって、使用可能温度は変化しますが、非石けん系グリスの方が耐熱性は高い傾向があります。

 

なお、グリスに使用される基油は、以下の2種類が一般的です。

 

  • 石油や石炭など地下資源由来の「鉱物油」
  • 原油を精製する工程で不純物を取り除いた「合成油」

 

多くのグリスの基油に鉱物油が採用されていますが、不純物が多く、耐熱性は低いため、高温下での使用には向いていません。

 

2つの成分のうち、特に増ちょう剤の成分は、グリスの耐熱性に大きく寄与します。

 

ほかにも耐水性や粘度低下に対する抗性「せん断安定性」にも大きく関係するため、耐熱グリスを選定する際は、増ちょう剤の成分に着目しましょう。

 

【関連記事】耐水グリスとは?増ちょう剤の成分別におもな種類と特徴、用途を解説

【増ちょう剤別】グリスの耐熱性一覧表

添加されている増ちょう剤の成分別にグリスの耐熱性能・使用可能温度をまとめました。

 

■石けん系グリスの耐熱性・使用可能温度一覧表

増ちょう剤の成分 使用可能温度
カルシウム石けん 70〜100℃
カルシウム複合石けん 120〜150℃
ナトリウム石けん 120〜150℃
アルミニウム石けん 80℃
アルミニウム複合石けん 120〜180℃
リチウム石けん 130〜150℃
リチウム複合石けん 150℃以上

■非石けん系グリスの耐熱性・使用可能温度一覧表

増ちょう剤の成分 使用可能温度
ウレア系 180℃
有機化ベントナイト 150〜200℃
シリカゲル 150〜200℃
ナトリウムテレフタレート 150〜200℃
PTFE 250℃

【基油別】グリスの耐熱性一覧表

グリスに使用されている基油別に耐熱性をまとめました。

 

■基油別の耐熱性能一覧表

基油の成分 耐熱性
鉱物油 ×
PAO(ポリアルファオレフィン)
エステル
フッ素
シリコーン
フェニルエーテル

【増ちょう剤別】耐熱グリスのおもな種類と特徴

 

使用されている増ちょう剤別に、耐熱グリスのおもな種類と特徴を解説します。なお、耐熱性が高いグリスとして、代表的な製品は以下の4種類です。

 

  1. カルシウム複合グリス
  2. アルミニウム複合グリス
  3. リチウム複合グリス
  4. 非石けん系グリス

 

高温下でも使用可能な耐熱グリスをお探しの方は、製品選びの参考にしてください。

特徴①:カルシウム複合グリス

増ちょう剤として「カルシウム複合石けん」を使用しているのがカルシウム複合グリスです。

 

120〜150℃の高温下で使用可能なカルシウム複合グリスは、石けん系グリスの中でも、高い耐熱性を備えています。

 

また、高い耐水性を誇り、湿潤環境にも対応できるのも特徴です。ただし、カルシウム複合グリスは、経時または高温下で硬化する傾向があるため、こまめな確認とメンテナンスが必要となります。

特徴②:アルミニウム複合グリス

「アルミニウム複合石けん」を増ちょう剤に使用した複合石けん系グリスがアルミニウム複合グリスです。

 

アルミニウム複合グリスは、120〜180℃の高温下でも使用可能な耐熱性と金属製への粘着性の高さを備えています。

 

また、耐水性や撥水性が高く、水分の影響を受けにくいだけでなく、圧走性も高いため、幅広い用途で使用できるのも特徴です。

 

ただし、高温下に長時間さらされると軟化する傾向があるため、耐熱グリスとして若干、扱いが難しいという欠点もあります。

特徴③:リチウム複合グリス

「リチウム複合石けん」を増ちょう剤として使用している複合石けん系グリスがリチウム複合グリスです。滴点(液化する温度)は約260℃と非常に高く、高温下でも軟化・液状化しにくい抜群の耐熱性を誇ります。

 

また、耐水性・防錆性にも優れているため、高温多湿な環境でも使用できる万能型グリスです。

特徴④:非石けん系グリス

有機化合物、または無機化合物を増ちょう剤として使用した潤滑剤が非石けん系グリスです。

 

なお、非石けんグリスのおもな種類としては、以下のようなものが挙げられます。

 

非石けんグリスの種類 添加されている成分 概要・特徴
ウレアグリス
  • ジウレア(芳香族ジウレア、脂肪族ジウレア、脂環式ジウレア)
  • トリウレア
  • テトラウレア(ポリウレア)
  • 分子内に2つ以上のウレア結合を有する有機化合物を増ちょう剤として添加している
  • 180℃の高温下で使用可能
有機型グリス
  • ナトリウムテレフタラメート
  • PTFE
  • 有機化合物を増ちょう剤として添加している
  • 150〜200℃以上の高温下で使用可能
無機型グリス
  • 有機化ベントナイト
  • シリカゲル
  • 無機化合物を増ちょう剤として添加している
  • 150〜200℃の高温下で使用可能

非石けん系グリスは、石けん系グリスと比較して全体的に耐熱性に優れている傾向があります。

 

ただし、増ちょう剤の成分によっては、耐水性やせん断安定性が低い可能性もあるため、自社の使用環境や稼働条件を考慮したうえで最適なグリスを選択しましょう。

【基油別】耐熱グリスのおもな種類と特徴

 

使用されている基油別に、耐熱グリスのおもな種類と特徴を解説します。なお、ご紹介する耐熱グリスは以下の4種類です。

 

  1. PAO系グリス
  2. シリコーングリス
  3. フッ素グリス
  4. フェニルエーテル系グリス

 

自社機械に使用する耐熱グリスを選定する際の参考にしてみてください。

特徴①:PAO系グリス

「PAO系グリス」は、基油にPAO(ポリアルファオレフィン)を使用している潤滑剤です。

 

PAO系グリスは耐熱性と酸化安定性に優れており、150〜200℃の高温下でも高い潤滑性能を維持できます。

 

また、粘度温度特性や低温流動性も高いため、高温下はもちろん、低温の環境でも活用しやすいのが特徴です。

 

PAO系グリスには、おもに「ウレア化合物」か「リチウムヒドロキシステアレート」が増ちょう剤として使用されます。

特徴②:シリコーングリス

シリコーンオイルを基油として使用しているのが「シリコーングリス」です。

 

シリコーングリスは耐熱性と耐寒性、化学的安定性が高いだけでなく、電気絶縁性も備えているため、幅広い用途で使用されています。

 

また、ゴムやプラスチックなどの素材を侵食しないため、金属部分以外の潤滑にも使用可能です。

 

なお、シリコーンオイルに組み合わせられる増ちょう剤は、おもにリチウムやアルミニウムなどの金属石けんが一般的です。

特徴③:フッ素グリス

基油としてPFAE(パーフルオロアルキルエーテル)を使用しているグリスが「フッ素グリス」です。

 

フッ素グリスは、200℃以上の高温下で使用されるほど、非常に高い耐熱性を誇ります。

 

酸化による劣化や揮発が発生しづらい性質も持っているため、メンテナンスフリーで長期間使用しやすい潤滑性能の高いグリスです。

 

また、フッ素グリスは温度によって形状や性質が変わりにくいため、高温だけでなく、低温環境でも潤滑性能を維持できます。

 

なお、PFAEにはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を増ちょう剤として組み合わせるのが一般的です。

特徴④:フェニルエーテル系グリス

フェニルエーテル系の合成潤滑油を基油として使用しているグリスが「フェニルエーテル系グリス」です。

 

フェニルエーテル系の合成潤滑油は、常温下、液体有機化合物の中でもっとも高い耐熱性・耐酸化性を誇ります。

 

そのため、工場内の高温環境や機械部品の中でも高荷重がかかりやすい箇所など、過酷な稼働条件で使用されるのが一般的です。

 

ただし、粘度が低く流動性が高いため、場合によっては使用しづらいケースもあります。また、他種類のグリスと比較して、製品価格が高いため、汎用性はそこまで高くないのが欠点です。

食品工場で使用可能なH1規格の耐熱グリスをお探しなら

高温下でも潤滑性能を発揮できる耐熱グリスは、製鉄工場や自動車部品工場などの製造機械はもちろん、食品機械にも使用されています。

 

ただし、食品機械に使用するグリスには、耐熱性や耐水性といった潤滑性能だけでなく、安全性も求められます。

 

潤滑性能と安全性を両立した食品機械用グリスをお探しであれば「JAX JAPAN」が提供する耐熱グリス「H1グリース」がおすすめです。

 

H1グリースは、公衆衛生・環境に関する事業を行う第三者機関「NSF」が定める「H1規格」を満たす食品機械用潤滑油です。

 

アメリカの政府機関「FDA」から認証された安全性の高い原材料のみを使用しているため、万が一、製品に混入し、消費者の口に入ったとしても、健康被害を最小限に抑えられます。

 

もちろん、高温下での機械潤滑が求められやすい食品・飲料業界の工場に対応可能な耐熱性や、潤滑性能を備えているのもH1グリースの特徴です。

 

無料サンプルもご用意していますので、この機会に安全性と潤滑油としての性能・汎用性を備えた「H1グリース」をぜひお試しください。

 

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【関連記事】JAXのH1グリース「ハローガードFG」ってどんな製品?

【関連記事】世界標準の信頼性をもつNSFとは?NSF認証の取得プロセスやメリットを紹介

 

この記事の監修

椎野 博貴

役職

セールスエクゼクティブ

資格

2級潤滑士
2019年 JAX H1 ANNALYSIS検定 修了
2022年 JAX SALES DIRECTOR PROGRAM 修了

JAX JAPANにて大手食品メーカーや機械メーカーを100社以上担当。潤滑油の使い方をより知るために、米国のJAX本社での研修トレーニングに日本代表として参加。食品業界はもちろん、他業界にも提案を広げ、全体管理とH1潤滑油の国内の拡販推進に携わる。