NSFとは?H1規格の詳細や認証取得のプロセス・メリットを解説

日本国内で食品や飲料水に関する安全性や品質を示す「NSF」について、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。
NSFが実施する認証制度は世界基準の安全性と品質の証であり、透明性の高い第三者機関として多くの信頼を得ています。
この記事では、NSFの概要や活動内容、実績などを紹介します。
また、食品機械用潤滑剤の安全規格である「NSF H1規格」についてや、取得のプロセス、メリットも深掘りしながら解説するので、NSF認証の取得を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
NSFとは
NSFとは「National Sanitation Foundation(国立公衆衛生財団)」の略称であり、公衆安全衛生分野の非営利機関です。
ここからは、NSFの活動内容と実績について詳しく解説します。
NSF認証の価値を正しく理解するためにも、NSFの概要を把握しておきましょう。
NSFの活動内容
現在、NSFは以下の活動を通して、世界の食品や飲料水の安全性を追求しています。
- 規格の作成
- 作成された規格を満たす製品の認証
- 認証された製品をつくる工場の監査
- 製品が認証されたことを周知
- トレーニングや教育プログラムの実施
NSFは1944年にミシガン大学の教授によって、公衆衛生学部内に設立されました。
当時、アメリカの食品や飲料水に関わる安全基準は州によって異なり、統一された基準がありませんでした。
そこで国家としての基準づくりのためにNSFが設立され、約80年経過した今では、国際的な安全基準のひとつとなっています。
1968年にはアメリカの環境保護庁からの依頼で、浄水器の「性能・安全性」の基準や試験を設け、認証を実施するようになり、NSF認証は世界の浄水器における国際基準としても活用されています。
その後、1996年にはWHO(国連世界保健機構)の協力機関となり、現在では世界的に食品や飲料水の安全性を高める活動に取り組む機関となりました。
参考:NSF|NSFについて
NSFの活動実績
NSFの主な活動実績は、以下の通りです。
- 110ヶ国以上、5,000社以上の製品メーカーへのサービス提供
- 657,000種類以上の製品にNSF認証を実施
- 年間30万件以上の監査によって組織のプロセスとシステムの有効性を実証
NSFは設立から80年間にわたり、上記のような人類と地球の健康の向上を目指す世界的な取り組みを実施しています。
NSFについてさらに詳しく知りたい方は、以下のYouTube動画もあわせてご確認ください。
NSF規格と認証
NSFでは、飲料水や食品機器において公衆衛生や安全性の基準を満たすものに対し、NSF認証を行っています。
このNSF認証は一度取得できれば、年1回の定期検査に合格している限り有効です。
NSFの認証を受けた製品には「NSFマーク」が付けられ、世界的な基準を満たしている製品として消費者にアピールできるでしょう。
ここからは、NSF規格と認証制度について詳しく解説します。
主なNSF認定製品
NSFでは、主に以下のような製品およびシステムの認証を行っています。
NSF認証におけるカテゴリ | 製品およびシステムの名称・ジャンル |
自動車 | ・自動車摩擦係数登録プログラム ・摩擦材プログラム |
建築製品とインテリア | ・化学阻害剤 ・電気安全 ・防火製品 ・ガス供給製品 |
消費者向けおよび小売製品 | ・化粧品適正製造規範(GMP) ・麻の成分検証 ・ホーム製品認証 ・キッチン製品 ・浄水器 |
食品の安全と品質 | ・ボトル入り飲料水および飲料の認証 ・ボトル入り飲料水および飲料のGMP登録 ・業務用食品機器 ・消費者価値検証認証 ・HACCPコンプライアンス検証 ・衛生的に清潔なナプキン ・輸入サプライヤー認定プログラム ・ISO 21469認証潤滑油 ・食肉および鶏肉加工機器 ・非食品化合物 – ホワイトブック™ ・オーガニックおよび専門認証 |
実験機器および関連サービス | ・バイオセーフティキャビネット ・バイオセーフティキャビネット現場認証者 – 基本認定プログラム ・バイオセーフティキャビネット現場認証者 – 強化認定プログラム |
管理システム | ・認定資格検索 |
天然製品 | ・麻の成分検証 |
栄養と健康に関する製品とサービス | ・アスリート禁止物質プログラム ・栄養補助食品 ・機能性食品・飲料 ・適正製造規範(GMP)認証 ・適正製造規範(GMP)登録 ・医薬品添加物 ・パーソナルケア/化粧品 |
持続可能性と環境 | ・持続可能性と環境プログラム |
水と廃水 | ・やけど防止および温度制御装置 ・大気水生成器 ・ボトル入り飲料水および飲料の認証 ・ボトル入り飲料水および飲料のGMP登録 ・飲料水システムコンポーネント ・飲料水処理薬品 ・飲料水処理装置 ・加工ダクタイル鋳鉄管 ・飲料水製品に使用される成分 ・インライン給湯温度調節バルブ ・リードコンテンツ認証 ・現場排水検査員 ・OQC登録 ・配管システムコンポーネント ・公共飲料水設備の性能 ・レクリエーション用水施設製品 ・廃水処理ユニット ・給水設備、システムコンポーネントおよび材料 ・飲料水用水質検査装置 ・中国向け飲料水処理装置 – ろ過 |
引用: NSF|Certified Products and Systems
上記のように、NSFは水や食品関連以外にも幅広いジャンルの製品・システムの認証に携わっています。
NSF H1規格とは
NSFでは、食品および水分野における公衆衛生と持続可能性に関する包括的な評価基準として「NSF規格」を設けています。
なかでも「H1規格」は、食品機械用潤滑剤の安全規格です。
食品機械用潤滑剤の安全規格には、以下のような種類が存在します。
規格 | 使用箇所・特徴 |
NSF H1 | ・食品に接触する箇所で使用可能 ・安全性の高い原材料を使用 ・万が一食品に混入しても健康リスクが低い |
NSF H2 | ・食品に接触する可能性がない箇所でのみ使用可能 |
NSF H3 | ・肉を吊るすフックの防錆等に使用 ・食品接触時には洗うか拭き取りが必要 |
NSF 3H | ・グリルやフライパン等の上で付着、焦げ付き防止 ・直接食品に接触する前提で使用 |
食品製造工程では、安全性や衛生対策として製造工程の自動化が進んでいます。
食品工場内の機械には用途にあった潤滑剤を使用していますが、潤滑油が食品に混入し、クレームや消費者の健康被害につながる恐れもあるでしょう。
このような事態を避けるためにも、使用する潤滑油を「NSF H1規格」に変更するだけで安全性を確保できます。
自社製品の安全性や衛生管理を強化するためにも、ぜひ使用をご検討ください。
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【関連記事】NSF H1について
NSF認証の取得プロセス
NSF認証を取得するには、以下の4つのプロセスを実施する必要があります。
- 製品に使用されている材料やパーツをリストアップする
- パーツリストに基づき、サプライチェーンを遡る
- 使用している材料に合ったテスト方法で検査
- 実際の試験結果をもとに評価する
認証をクリアするためには、製品を作るために必要なパーツリストだけではなく、パーツの材料や表面比率など、さまざまな情報が必要です。
そのため、製品に関わるすべてのサプライチェーン(原材料から製品ができるまでの一連の流れ)を遡らなければなりません。
全てのパーツリストが揃ったら、製品カテゴリーに合った手順や試験方法で浸出試験を実施し、測定結果にパーツの表面積比率の係数をかけ、評価する数値を求めます。
試験結果が基準に合格していれば、NSF認証が受けられるでしょう。
なお、NSFの規格には、スタンダードとプロトコルの2種類があります。
スタンダードは、通常のプロセスを経て作成される規格です。
スタンダード規格は厳しく設定されており、規格によっては18年の年月をかけて設定されたものもあります。
もうひとつのプロトコルは、緊急の事案が発生した際、専門家を中心として簡略化された手続きによって作成された規格です。
また、NSF認証は、取得よりも維持が難しいといわれています。
1度NSF認証を取得できても、次の認証で受からなかった企業は少なくありません。
なぜなら、新技術の発展によって発見された新しい情報が日々、規格に追加されていくからです。
技術開発と共にNSF規格も進化していくため、メーカー側も対応する製品のアップデートが求められるでしょう。
【関連記事】JFS規格とは?3つの構成要素や認証取得フロー・費用について解説
NSF認証を取得するメリット
NSF認証を取得するメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 製品販売を有利にする
- 消費者に製品の安全性を伝える
- 世界標準の高い信頼性
それぞれのメリットを詳しく確認していきましょう。
メリット1:製品販売を有利にする
NSF認証を取得するメリットの一つが、製品販売におけるアドバンテージを獲得できる点です。
NSF認証をクリアすることで、国際的な第三者機関によって製品の安全性と品質が担保されます。その結果、自社製品の認知度や評価向上につながるでしょう。
なお、メーカーが独自に品質に問題がないか検証することを第一者認証、その会社が所属する団体や業界が認証することを第二者認証、利害関係のない機関から受ける認証を第三者認証といいます。
企業側やメーカーが透明性のある第三者からの認定を重視する理由は、信頼につながりやすいからです。
消費者にとっては安心安全の証明として、企業やメーカーには品質の高い製品であるアピールができます。
また、前述したようにNSF認証規格は毎年追加されるため、認証の維持が困難です。
だからこそ、毎年の定期検査をクリアできる製品は、優れた安全性と品質を証明できるでしょう。
最終的な製品だけではなく、素材や部品のNSF認証を受けるメーカーも少なくありません。
NSF認証に受かれば公式サイトに社名・商品名が掲載されるため、メーカーにとっても取得する価値は高いといえるでしょう。
メリット2:消費者に製品の安全性を伝える
NSF認証は、消費者に製品の安全性を伝えるためにも役立ちます。
NSFは、どの業界や団体にも所属しない第三者機関です。
独立した透明性の高い機関が審査するからこそ、NSF認証を受けた製品は厳格な基準をクリアした安全性が高い製品として認められます。
残念ながら日本ではNSFの知名度が低く、消費者にとっても馴染みのない認証制度かもしれません。
しかし、消費者の視点もシビアになっている現代では、より安心安全な製品を提供する企業が評価されています。
今後、認知が高まる可能性も考慮して、あらかじめ認証を受けておけば、競合より高い評価を得られるでしょう。
【関連記事】食品の衛生・安全を守るHACCPとはどんな制度?義務化の時期や手順を解説
メリット3:世界標準の高い信頼性が担保される
NSF認証の取得によって、世界標準の高い信頼性が担保される点も大きなメリットです。
NSF認証は、110ヶ国以上のメーカーや企業で実施されており、公衆衛生に対する厳しい試験が行われます。
そのため、たとえ自社が世界的に知名度の低いメーカーであっても、NSF認証によって製品の安全性や信頼性をアピールできます。
日本国内だけでなく海外への展開を検討している企業であれば、NSF認証を取得する価値は高いといえるでしょう。
NSF H1規格をクリアする安全性の高い潤滑剤をお探しなら
NSFは、世界の食品や飲料水の安全性を追求したアメリカの非営利団体です。
1944年に設立されたNSFは現在、食品や飲料水の安全性を証明する基準の設定・登録・認証を実施しており、世界基準の信頼性を示すひとつの指標になっています。
NSF認証を取得することで自社製品の世界基準における安全性を証明できれば、国内外のメーカーや消費者からの認知度や評価の向上が期待できるでしょう。
なお、食品製造機械に使用可能な安全性の高い潤滑油をお探しの方は、JAXJAPANの「H1潤滑剤」がおすすめです。
JAXJAPANでは、食品製造機械の潤滑に最適なNSF H1規格をクリアした製品を取り扱っています。
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安全性だけでなく、さまざまな用途や環境に対応できる高性能な潤滑剤をご用意しているので、自社に最適な潤滑剤をお探しの方は、以下の「商品ラインナップ」をご確認ください。
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